皆さんも昔、風船を膨らませ過ぎて、ビクビクしながら縛った経験がありますよね。
私が思うに、現在の不動産市況は、それに近いものがあります。
下表を見てください。国土交通省公表の「公示地価」と日本銀行公表の「国内銀行の不
動産業への新規貸出金額」の相関をグラフにしてみました。
▲の新規貸出額につられて、●の地価が動いていっているのが分かりますか。
平成バブル以降、貸出額につられて、地価が波打っていますね。
近年では、Jリートと言われる不動産投資信託に巨額のお金が流れ込み、2016 年には
新規貸出額12 兆円超を記録し、その後、現在にかけて急速に失速しています。
ちなみに、1989 年のバブル絶頂期でも約10 兆円でしたので、まさに巨額と言えます。
では、東京オリンピック、大阪万博を控えた現在、地価は持続するのでしょうか?
私は、不動産市況は、大きな転換期にあると考えます。そして、経営者は、企業の規模、
所有・賃借に関わらず、将来リスクに備えた、CRE戦略を考えるべきです。
CREとは、Corporate Real Estate の略であり、企業が事業継続のために使用する全
ての不動産のことをさします。保有・賃借の区別はありません。
“経営資源”としてのCREを経営戦略に組み込むことにより、いかに企業価値の向上
を図るかという『CRE戦略』のあり方こそが企業経営において重要なことなのです。
皆さんが所有又は借りている事務所や店舗ですが、実は、別の場所に機能移転、もしく
は集約した方が、経営効率がいいのではないですか?
CRE戦略の入口は、まず現状把握です。皆さんが所有している不動産については、流
動性(処分の難易)、収益性(収益額・率)の観点からスクリーニングを行います。
所有不動産の価値を把握し、事業上の位置づけを明確化することで、意思決定の迅速化、
社内業務とアウトソース業務の効率化を図ることができます。
【Ⅰ】継続利用(収益性が高く、流動性も高い)
【Ⅱ】戦略保有(収益性が高く、流動性は低い)
【Ⅲ】積極処分(収益性が低く、流動性も低い)
【Ⅳ】当座保有(収益性が低く、流動性は高い)
例えば、皆さんが借りている店舗についてはどうでしょうか。
年間の固定費削減は、経営の必須項目であり、月額支払賃料を数%削減しただけでも、
インパクト大です。今借りている店舗について、借り手、貸し手双方からの査定アプロー
チにより、スクリーニングを行い、交渉優先の選定、スケジュール策定を行います。
現状の自社を知る上で、不動産価値は欠かすことのできないものです。
紙幅の関係で、CRE戦略のほんの入口紹介ですが、不動産市況の転換期にあ
る今だからこそ、一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
執筆者ご紹介
不動産鑑定士 谷詰岳史(たにづめ・たけし)
①小売店で年額賃料総額1億円の減額実績あり。立退き料の算定、新規地代設定も可能。②大型商業施設、工場財団のほかホテル、ゴルフ場、サービス付高齢者住宅等のオペレーショナルアセットの評価実績も豊富。③借地権・底地・隣地併合・分割に伴う評価実績も豊富。どんな物件でも評価いたします。
- 地代・家賃の増減額交渉、立退き交渉に伴う評価
- 特殊案件の評価
- 複雑な権利関係の評価
かもめの不動産鑑定株式会社
〒651-0084 神戸市中央区磯辺通3丁目1-2 NLC三宮ビル8階
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