司法書士 冨本 隆介 (司法書士事務所 Karma Legal Office)
新しく企業様よりご相談を受けるとき、われわれ司法書士は、「まず御社の登記簿、定款、 株主の構成について教えて頂けますか?」とお話をさせて頂きます。
企業経営者にとっては事業計画、資金繰りや、雇用関係など日々多くの事を考え、決断をされていると思われます。企業様によっては、大事なものだけど意外と忘れがちな登記簿や、 会社の定款について、定期的に見直すことのメリットについて本コラムで取り上げたいと 思います。
2006 年の会社法の改正により、定款自治が大幅に広がったためこの 15 年ほどの間に設立されている会社は、現行の会社法に沿って機関設計をされている会社が多いです。それ以前の旧商法下での設立の会社は、法改正の際に定款の見直しなどを行っておらずに形骸的 な定款を維持するために過分な負担を負っている可能性もあるので会社の現状に合った登 記簿、定款への変更をお勧めいたします。
これは典型例を挙げると、旧商法下の取締役会、監査役設置会社という機関設計だと、最低4人の役員が必要ですが、現行では取締役 1 人から株式会社は運営が可能なので、定款、 登記を変更することで名目上だけの役員などを確保する必要もなくなります。
会社定款というのは法人設立時に作成する定款に関しては、公証人の認証を要するので、公証人の判子等が押された書面になりますが、それ以降に株主総会の決議によって定款内 容が変更された場合は、その都度の公証役場で再認証などが行われるわけでなく会社自身 が(もしくは、その書類作成を依頼された専門家が)作成し会社が管理することになってい ます。しっかりと変更の履歴についての管理がなされていないと、どの部分が変更されてい るか、どれが最新の定款かということが把握されていない会社が意外と多く目にします。
また、コロナ渦において感染リスク軽減のために進んだ「オンライン会議」ですが、こちらもまだ、完全なバーチャルオンリーの会議は、上場企業など要件は限定されておりますが、テレビ会議システムを利用した「バーチャル株主総会」というのも令和 3 年度より法改正により開催できるようになり、ソフトバンクなどの大企業が定款変更を行い、活用をしてい るようです。
次に、定款や登記簿を見直さないでおいて困った事例や、見直したことによって得られたメリットなどを一例ですが具体例を挙げさせていただきます。
①最後の登記より 12 年以上登記がなされていない株式会社は、一定期間に届出を行わないと解散をされてしまう恐れがあります。(参照:法務省 HP https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00083.html)
②①までいかなくても、法律上定められている、「登記事項に変更があった時から 2 週間以内に登記を行う」ことを放置してしまうと、突然、裁判所より「会社法違反事件」ということで過料という罰金を払う命令が届くことがあります。
③同族会社で同じ役員が続いているのに 2 年ごとの役員任期などのままだと、10 年と比べて 5 倍の経費がかかってしまうことになります。
④現行の定款がどれだか分からなくなり、登記懈怠を生じているかも把握できない状態となってしまいます。
①現状の会社にフィットした機関、制度設計に変更することで、管理維持コストの軽減や登記懈怠等の不要な過料制裁を回避することにつながります。
②必要な手続きや専門家との打ち合わせの時に、現行の会社の基本設計をすぐに把握することが出来るため、無駄な時間を使わずに済みます。
③現代にフィットした形の会議の運営方法などに変更することも出来るので、会議や決議の負担を減らすことにもつながります。
④株主の種類を分けて設定することも出来るので資金調達や、事業承継などの準備も効果的に進める事が出来ます。
このコラムをきっかけに、会社の登記簿や定款の状態について、専門家に確認をしてもらってはいかがでしょうか?一度の手続きで継続的なメリットが、享受できるかもしれません。
また、こうべ企業の窓口ではこういった法務面だけに限らず 12 士業の各専門士業が知恵を寄せ合い、企業の悩みごとの相談を行うために、毎月第 2 木曜日に相談無料・秘密厳守の Zoom 相談会を開催しております。(https:www.kk-madoguchi.jp/)
こちらも是非、ご活用いただければと思います。
執筆者のご紹介
司法書士 冨本 隆介(とみもと・りゅうすけ)
令和2年5月に芦屋市より移転してまいりました。よろしくお願いします。海外での経験を活かし、外国人向けの法務サービスにも対応しております。外国人不動産取引、相続手続き、法人設立、支店開設等。
また、相続・資産管理対策として家族等の信託契約のコンサルティングも行なっております。
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