電子取引データの保存が必要となります!
帳簿書類のデジタル化について定めたいわゆる「電子帳簿保存法」については、当初より帳簿書類をデジタル化するための要件が厳しく、制度を利用するには高いハードルがありました。そこでこれまで何度も改正されてきましたが、令和3年度改正ではさらに要件が緩和されるなど大きな改正がありました。
⑴ 令和3年度改正の主な内容
これまで制度の利用にあたって必要だった税務署長の事前承認が不要となり、一定の保存要件を満たせば利用が可能となりました。また、税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じること等を前提に、以前よりも簡易的に帳簿等を電子保存することが可能となりました。
⑵ 電子帳簿保存法の構成
大きく3つの項目から構成されています。
① 国税関係帳簿書類の電子保存について
仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿と契約書や領収書などの書類について、最初から自社でパソコン等を利用して作成したものが対象となります。つまり、作成したデータを原本として保存する制度です。この場合の要件は、システム関係書類等を備え付けること、パソコンやプリンタ等を備え付け画面や書面で整然と速やかに出力できること、税務調査時にデータのダウンロードに応じることの3つです。なお、さらに一定の要件を追加した上で届出書を税務署長に提出した場合には、優良な電子帳簿として、申告漏れがあった際に課される過少申告加算税が5%軽減されます。
② 国税関係書類のスキャナ保存について
契約書や領収書などの取引先から受け取った書類や自社が交付した書類の控えが対象となり、紙が原本となります。よって、原本である紙の内容と同一性を確保するために、タイムスタンプの付与に関する要件や取引内容の検索要件、一定水準以上の機能を有するスキャナを使用することなど、一定の要件を満たすことが必要です。
③ 電子取引データの保存について
インターネットや電子メール等の電子取引により受け取った、あるいは交付した契約書、注文書、領収書などのデータが対象となります。電子取引で授受したデータはそのまま原本として保存しなければならず、紙に出力して保存することは認められなくなりました。
なお、上記②③に関して不正があった場合には、申告漏れがあった際に課される重加算税が10%加重されることとなりました。
⑶ 電子取引データの保存の義務化とその要件
前述2)の①や②の制度を利用するかどうかは任意ですが、③については義務となりますので全ての事業者が対応しなければなりません。
電子取引データの保存の際の要件は次の通りです。
- イ.パソコンやプリンタ等を備え付け、画面や書面で整然と速やかに出力できること
- ロ.自社開発プログラムの場合は、そのシステムの概要書を備え付けること
- ハ.取引の年月日や金額、取引先を検索できること等
- ニ.タイムスタンプの付与に関する要件を満たすか、データの訂正や削除の履歴を確認できるようにするか、あるいは、訂正や削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用するか、のいずれかを行うこと
タイムスタンプやシステムの導入には費用がかかりますが、上記ニ.のうちの“事務処理規程を定めて運用する”方法であれば費用はかかりません。この事務処理規程についてはサンプルが国税庁HPで公表されています。また、上記ハ.の検索機能についても簡易な方法(規則的なファイル名を付す方法など)が国税庁HPで紹介されていますので、ご参照ください。
⑷ 宥恕措置
電子取引データの保存については当初、令和4年1月以後に適用される予定でした。ところが、多くの企業からのシステム構築等が間に合わないといった声を踏まえ、システム対応やワークフロー整備の遅れ等のやむを得ない事情があれば、引き続き2年間は紙の出力による保存が認められることになりました。しかし、令和6年1月以後に行う電子取引からはデータによる保存が必要となりますので、未対応の場合は今から準備を進めていきましょう。
(この内容は、2022年9月時点の情報です)
執筆者のご紹介
税理士 豊見知雄(とよみ・ともお)
経営支援業務(いわゆるMAS業務)に力を入れております。中小企業の社長は日々の業務に追われ、しっかり“経営”に向き合う時間がなかなか取れないことも多々あります。そんな社長にいつも頼られる存在でありたいと思っております。
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