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会社を丸ごと狙う近年の地面師<会社乗っ取り>/司法書士 佐藤大輔

会社を丸ごと狙う近年の地面師<会社乗っ取り>

無関係の企業が所有する土地を売却し、売買代金を詐取する目的で、土地を所有する企業の代表者や本店所在地の登記を変更したとして「地面師」が逮捕されたという報道がありました(土地転売目的で虚偽登記 容疑の「地面師」ら逮捕/令和5年12月6日付産経新聞/https://www.sankei.com/article/20231206-R3WMEB4AYBKTRG4SW3PYYWIPQE//最終アクセス令和5年12月30日)。 

1.これまでの地面師

これまで「地面師」といえば、不動産登記名義人(売主)に成りすまし、買主から売買代金を詐取する方法が一般的でした。 このような被害を生じさせないよう法律は、登記申請代理人になることができる者を司法書士に限定し<1、2>、司法書士に対しては厳しい本人確認義務と違反への厳しいペナルティーを課しています。 <1>弁護士も登記申請をすることができます(東京高裁平成7年11月29日判決)が、弁護士の多くは登記であれば司法書士に任せ、自らは担当しないことが多い印象です。 <2>登記に関する相談を受けることも不可。司法書士以外の者が登記に関わった場合には「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(司法書士法第78条)。 

2.産経報道による地面師

ところが、産経報道の地面師は、まず①会社登記の代表者等を「地面師」側の人間に変更したうえ、②会社の登記簿上は売主の代表者となって、買主から売買代金を詐取することを狙った新種の地面師です。

不動産の所有権移転登記をするためには、売主の登記識別情報、印鑑証明書、売主が会社であるときには会社登記事項証明書などを要するところ、あらかじめ売主である会社の登記代表者を変更しておくことによって法務局に印鑑証明書などを発行させたのだと考えられます。このような手口を防止するため法務省も対策を講じています。産経報道では「登記移転に気付いた企業が、登記を元に戻したため、転売はできなかった。」とのことですので、法務省の対策が効を奏したのかもしれません。 

3.詐欺師に狙われる企業

ところで、司法書士の主たる業務の一つは登記ですが、登記に関連して重たい相談が持ち込まれることがあります。その一つが「自分が経営していた会社を乗っ取られたから、取り戻して欲しい。」というものです。

狙われる企業は、何も不動産を保有している企業に限定されません。企業は、預貯金、ブランド、ノウハウなどを有していますので、詐欺師等はこれらを狙うのです。

4.詐欺師の手口

手口も様々です。

  • 本来必要のない相続税対策として所有不動産の売却と買戻を提案され、詐欺師の言葉を鵜呑みにして実行した企業が被害にあった事例。
  • 問題解決のために部外者を役員に選任したところ、欲しいままに会社財産を処分された事例。
  • 第三者に通帳、銀行印、法人実印どころか個人実印を全て預けさせられたうえ、言葉巧みに株式譲渡契約を結ばされ、会社を乗っ取られた事例。
  • 事業の売却先を探していた会社に買い取りを打診して近づき、言葉巧みに会社財産を移転させた事例。 

5.被害者の共通点

詐欺被害にあった会社の共通点は、次のとおりです。

  • 安易に他人を信用した(残念なことに、乗っ取りグループの中に専門家士業がいたこともあります。)
  • 安易に印鑑を押した。預けた。 

6.被害回復の方法

上に挙げた事例を全て救済できた訳ではありません。

また、会社の経営権は取り戻せたけれど、莫大な財産的な損害を被った企業も多数あります。被害に遭わないことが大切なのです。被害に遭わないためにお願いしたいことは下記3点です。

  1. 安易に他人を信用しないこと。
  2. 絶対に印鑑を他人に預けないこと。
  3. 何かオカシイと思ったときに、直ぐ相談できる専門家士業を身近に置いておくこと。

7.被害にあったときの相談先

会社乗っ取り被害の回復には、司法書士だけでは足りません。弁護士や税理士など多士業の力を合わせて解決にあたるのが通常です。

その点、私も所属する「こうべ企業の窓口」であれば、精鋭士業が揃っておりますので、是非ご相談ください。 

執筆者のご紹介


司法書士 佐藤大輔(さとう・だいすけ)

一般的司法書士業務+事業承継・信託・従業員持株会・フランチャイズシステム・M&A等のプラン設計・実行。社長・従業員の法律相談。140万円以下の民事訴訟・示談代行。少額裁判助成制度(兵庫県司法書士会)の利用実績は当事務所が第1位。

  1. 会社法関係のややこしい手続
  2. 登記など普通の司法書士の仕事
  3. 黄金の士業人脈

あなたのまちの司法書士事務所グループ所属

あなまち司法書士事務所

〒657-0044 神戸市灘区鹿ノ下通二丁目4番15号

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