土地境界不明にならないように地震発生前にできること/土地家屋調査士部屋昇壮

令和 6 年の元旦に発生した北陸地方を中心とする地震により亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、ご遺族の皆様にお悔やみを申し上げます。また、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。

今後、南海トラフ地震の発生も懸念される中、ここでは地震や土砂崩れなどが生じた場合、被害を受けた土地はどうなってしまうのか?また、地震が起きるまでにしておいたほうがよいことについて考えてみたいと思います。

地震が発生すると

地震が発生すると、規模や場所にもよりますが、水平移動および地盤沈下が生じてしまいます。阪神淡路大震災や東日本大震災でも、大きいところでは数メートルの水平移動および地盤沈下が生じています。

では、もし地震が発生した場合、所有する土地はいったいどうなるのでしょうか?

まず

まず、地震により土地がずれてしまった場合は、土地の境界(筆界(ひっかい又はふでかい)といいます)は相対的に移動したものとする、という法務省の見解があります。つまり、地震で土地は平行に移動し、形状や面積は変わらない、という考えとなります。

次に

次に、土砂崩れが生じた場合、土地が欠けてしまうので面積(地積といいます)が減ってしまうのでは?と考えてしまうかもしれませんが、登記の世界では、土地の面積(地積といいます)は水平投影面積により面積を求めることになっています。

つまり、上から見た状態で面積を計算するので、土砂崩れにより欠けた部分も自分の土地の一部ということになります。

以上のことから

以上のことから、地震が生じて土地に被害が生じた場合でもそんなに問題なんじゃない?と考えられるかもしれませんが、ここには一つ大事な要素が欠けています。

それは、そもそも自分の土地の範囲がどこまで、という主張ができるかどうか、という点です。

災害が生じる前に、「自分の土地はあそこのフェンスまで」とか、「石垣の裾までが自分の土地だ」と思っていたとしても、震災でフェンスが倒れてしまったり、石垣が崩れてしまったりすることで、自分の主張の根拠となる構造物が失われてしまうと、そもそも自分の土地の範囲を正確に主張することができなくなってしまうわけです。

こうならないためにしておいたほうがよいのが、「土地地積更正登記」という手続きとなります。

土地地積更正登記

これは、土地の測量を行い、所有地に隣接する所有者と土地の境界について確認をした結果、登記簿に記載されている地積と異なっていた場合に、これを修正(=更正)する、という手続きです。

 

土地地積更正手続の際には、自分の所有する土地の範囲が解る地積測量図を、登記手続申請の際に添付することになっており、登記が完了すると、地積測量図は法務局に備え付けられ、手数料を払えば誰でも見ることができるようになります。

地積測量図は一度備え付けられると、次に同じ土地について地積測量図を備え付けられる登記手続きがなされるまで、原則として永久に法務局で保管されます。

また、以前は紙媒体としてバインダーに綴じられて法務局の庁舎内で保管されていましたが、現在はデータ化され、バックアップもされていることから、法務局自体が地震や津波等で被災した場合でも、地積測量図のデータが亡失することはありません。

地積測量図

先ほどの地積測量図ですが、時代とともに役割が少しずつ増してきています。

 

昭和40年代頃まで

昭和 40 年代頃までに作られていた地積測量図は、土地の面積を知るためだけのものでした。この図面では、土地の形状をいくつかの三角形に分けて、その三角形の底辺と高さだけが記されているだけでした。 

その後

しかし、その後、地積測量図には次のような情報が追加されました。

  • 土地の周りの長さ(外周の寸法)
  • 境界点にある標識の種類

これにより、地積測量図は土地の形や境界を知るための役割も持つようになりました。

平成17年の不動産登記法の改正

さらに、平成 17 年の不動産登記法の改正により、地積測量図は基本三角点等(日本の地図の基準点)に基づいて作成されるようになりました。ただし、周りの状況によってはこの基準点を使わなくても良い場合もあります。

この改正により、地積測量図は土地の形や境界を示すだけでなく、その土地が日本のどこにあるかを正確に示す役割も持つようになりました。

  

土地地積更正手続を行うことにより、誰に対しても、いつまでも、自分の土地の範囲を主張することができるようになるわけです。

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執筆者ご紹介

土地家屋調査士 部屋昇壮(へや・しょうそう)

敷地の境界をはっきりさせたいときや、土地の分割を行う際における土地の調査や測量についての経験が豊富です。また建物については、ほかの同業者があまり取扱わない区分建物(マンション、長屋等)の業務経験も豊富で同業者内での講師実績もあります。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 1.土地境界の調査、確認、測量、登記手続

 2.建物(普通建物、区分建物)の調査、測量、登記手続

 

 

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