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外国人雇用における在留資格の基礎知識:企業が押さえておくべきポイント/行政書士尾川周三

日本の多くの企業にとって、労働力不足は深刻な課題となっています。このような状況下で、外国人労働者の雇用は有効な解決策として注目されています。しかし、外国人を雇用するには、適切な在留資格の取得が不可欠です。

この記事では、外国人雇用における在留資格の基礎知識と、企業が押さえておくべきポイントを解説します。

1. 在留資格とは?

在留資格とは、外国人が日本で活動するための許可のことです。「出入国管理及び難民認定法」に基づいて定められた法的資格で、その活動内容もしくは身分・地位に応じた種類が存在します。日本で合法的に働くためには、外国人本人が該当する在留資格を取得し、その範囲内で活動する必要があります。

在留資格の種類は約 30 種類ありますが、大きく①居住資格と②活動資格の 2 つに分かれます。

① 身分または地位に基づく資格「居住資格」

具体的には「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の 4種類があり、これらの在留資格には就労の制限がありません。

② 活動内容に制限を受ける資格「活動資格」

「就労可能な在留資格」と「就労不可の在留資格」に分かれます。就労不可の在留資格には「短期滞在」「研修」「文化活動」「留学」「家族滞在」の 5 種類がありますが、そのうち文化活動・留学・家族滞在の在留資格は、「資格外活動」の許可を受ければ、一定の期間アルバイトなどの就労が可能です。正社員ではなく、パート・アルバイトで雇う場合でも、必ず在留カードをチェックし、資格外活動許可が下りているかを確認してください。

また、就職活動やワーキングホリデーなど法務大臣が個々の外国人に対して活動を認める「特定活動」という在留資格もあり、ケースによっては就労が可能です。

2. 主な就労可能な在留資格(就労ビザ)

在留資格は「ビザ」と呼ばれることがありますが、外国人が上陸審査の時に使用する「査証」のビザとは異なるものですが、働くことを目的とした在留資格を通称で「就労ビザ」と呼んでいます。

上記②の活動資格のうち、外国人を雇用する際に主に利用される就労ビザには以下のものがあります。

技術・人文知識・国際業務

技術者や専門職、国際業務を担当する外国人向けの資格です。

例としては、エンジニア、マーケティング専門家、通訳などが該当します。大学などで学んだ知識や母国の企業での経験に基づく必要があり、単純労働は含まれません。

例えば、「コンビニのレジ業務」や「弁当の箱詰め作業」といった単純作業は認められず、資格外の活動に従事させていた場合、企業側が「不法就労助長罪」に問われる可能性がありますのでご注意ください。

2019 年に創設された、人手不足とされる分野(建設、介護、製造業など)で外国人の就労が可能な在留資格です。学歴は不要ですが、分野ごとの試験に合格することが取得の条件となります。即戦力を求める企業には非常に有効で、外国人労働者が単純労働を含む幅広い業務に従事できることが最大のメリットです。

技能実習

開発途上国から技能を学ぶために来日する外国人向けの資格です。単純作業では習得できない技能を実習によって取得するための活動で、特に製造業や農業分野で利用されています。

外国人を雇用する際には、適切な在留資格を取得するために、以下の手続きを踏む必要があります。

1. 採用計画の策定

どの在留資格が該当するかを確認し、それに基づいた採用計画を立てます。

2. 申請書類の準備

企業側と外国人側が必要な書類を準備します。具体的には、雇用契約書、企業概要書、学歴証明書などが必要です。

3. 在留資格認定証明書の申請

地方出入国在留管理局で申請し、認定を受けます。申請者は原則本人ですが、法定代理人のほか、申請取次の承認を受けた行政書士や弁護士などの取次者も申請することができます。この手続きには通常 1~3か月かかります。

4. ビザの取得と入国

海外にいる外国人を雇用する場合は、在外日本大使館で就労ビザを取得し、日本に入国します。入国後、在留カードが発行されます。

4. 在留資格の管理と更新

取得した在留資格は、定期的な更新が必要です。在留期間の満了日を把握し、早めに更新手続きを行うことで、雇用の継続を確実にします。上記 3.の在留資格認定証明書の申請と同様、申請者は本人のほか、法定代理人や申請取次者も申請可能です。

在留期間の確認

在留カードを定期的に確認し、資格が有効かどうかをチェックします。例えば、「留学」の在留資格(学生ビザ)を取得している外国人が、卒業や退学後、在留資格を変更せずに日本に滞在し続けると、不法滞在(オーバーステイ)となります。これは重大な法的違反であり、罰金や強制退去などの厳しい処罰が科される可能性がありますので、外国人学生をアルバイトなどで雇用している場合は特に注意が必要です。

更新手続き

在留資格の更新は、満了日の 3 ヶ月前から可能です。企業の経営状況や雇用状況が審査されるため、日々の管理が重要です。

5. 不法就労のリスクと対応策

不法就労のリスクは、企業にとって重大な問題となり得ます。不法就労が発覚した場合、企業は罰金を科される可能性があるため、厳重な管理が求められます。

• 在留資格と在留期限の確認と管理

定期的に外国人労働者の在留カードを確認し、業務内容が在留資格に適合しているか、在留期限を超えていないか(オーバーステイでないか)などをチェックします。

• 法令の遵守

最新の労働法や移民法を常に確認し、法令に基づいた雇用を行います。

6. まとめ

外国人を雇用することで、企業は新たな成長機会を得ることができます。しかし、外国人の雇用に関する手続きや在留資格の取得は、法的な要素が絡むため、慎重な対応が求められます。専門的なアドバイスや手続きが必要な場合は、行政書士などの専門家にご相談されることをお勧めします。正確な情報と適切なサポートを受けることで、安心して外国人労働者を雇用することができます。法令を遵守し、外国人労働者の雇用を成功に導くために、しっかりと準備を進めましょう。

 

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執筆者紹介

行政書士 尾川周三(おがわ・しゅうぞう)

行政書士をしながら夜はカレー屋(ネパール料理店)を営んでおります。お店は今年で18年目に入り、ネパール人との関わりが深くなったことから行政書士のほうはネパール人に特化したビザ・帰化申請等の取次(入管業務)が主な業務となります。また入管業務以外では、お店のお客様からの直接の依頼で、各種許認可の申請、契約書の作成、補助金の申請サポート等、小回りのきく行政書士をモットーとしております。

 

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