労働基準監督年報から見える必要な対応とは/社会保険労務士山本美香

みなさま、こんにちは。

今回は、「令和4年度労働基準監督年報」について、取り上げます。

この内容を手掛かりに、労働基準監督署が、どんな対策を推進しているのか、何に注目しているのか見えてきますので、説明してまいります。

1.労働基準監督年報とは

「労働基準監督年報」とは、労働条件や安全衛生に関する対策の推進や、日本全国の労働基準監督署が行った監督指導や労災補償、法改正に関する情報などが、全 75 ページに渡り、掲載されております。

労働基準監督署は、支署を含めて、全国に 325 署設置。

労働基準監督官は 3,094 名で、全国合計約 382 万か所の適用事業場を担当しております。

 

【参考:令和四年労働基準監督年報】

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/kantoku01/dl/r04.pdf 

2.定期監督等実施状況・法違反状況

今回は、定期監督実施状況に関して、取り上げます。

令和 4 年度の定期監督実施事業所数は、142,611 件。

そのうち違反事業所数は、100,696 件。

違反事業所数割合は、全体の 70.1 パーセントにも及びます。

では、どんな違反があるのか、中身を見ていきましょう。

 

1 位 労働安全衛生法 66 条~66 条の 6(健康診断) 29,974 件

2 位 労働安全衛生法 20~25 条(安全基準) 27,041 件

3 位 労働基準法 32 条(労働時間) 22,305 件

4 位 労働基準法 37 条(割増賃金) 20,554 件

5 位 労働基準法 39 条(年次有給休暇) 14,264 件

6 位 労働基準法 15 条(労働条件の明示) 13,853 件

7 位 労働基準法 108 条(賃金台帳) 12,254 件

8 位 労働基準法施行規則 24 条の 7 条(年次有給休暇管理簿) 11,264 件

 

違反件数の上位から、監督官が何に注目しているのかが、少し見えてきます。

 

1 位と 2 位は、労働安全衛生法関連です。

具体的には、定期健康診断の未実施、特殊健康診断の対象者漏れなど、従業員の健康管理が不十分であること。また、作業環境の改善不備、機械の安全装置の未設置など、安全対策の不足によるものが、多く見受けられました。

定期健康診断は、従業員が安全安心に働くことに直結するもの。

安全配慮義務について、会社は厳しく求められるところです。

 

3 位以降を見ると、36 協定の届出や運用不備、時間外労働や休日労働の割増賃金の未払いなど、不適切な勤怠管理によるもの。従業員の申告のもと、未払い残業代や不適切な給与カットなどが調査され、是正指導が実施されました。

6 位の労働条件の明示については、数年ごとに、法改正で明示事項が追加されており、会社側には、事前に詳細に決定しておく必要があります。入社時に明示することで、その後のトラブルも回避できる可能性があります。

この上位 8 位までの項目は、企業規模に関わらず、全ての企業に対応が義務付けられている項目となります。

3.まとめ

みなさま、いかがでしたか?

これを機会に、御社の状況を確認してみては、いかがでしょうか?

みなさまも年 1 回受診される健康診断と同様に、会社の状況を確認するのが、私も所属する神戸商工会議所所属の士業有志で立ち上げた「こうべ企業の窓口」が考案した「企業ドック」で、労務管理以外についても、診断が可能です。

お困りのことがありましたら、私たち「こうべ企業の窓口」が、事業者のみなさまが安心して事業運営ができるように、サポートいたします。

お気軽に、ご相談くださいませ。

執筆者ご紹介

社会保険労務士 山本 美香 (オフィスこん)

「共につくり、共にあゆみ、共に成長をあじわう」

経営者の皆さまとひざとひざをつきあわせながら、人づくり組織づくりを伴走いたします。

 

オフィスこん

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