パワハラ・セクハラ・マタハラ防止措置が全企業に義務化


弁護士 松谷 卓也 (神戸明石町法律事務所)


1 2020年6月に施行されていた労働施策総合推進法の改正において、事業主にパワハラ防止のための雇用管理上の措置義務が課される一方、中小企業については2022年3月31日までは努力義務とし猶予期間が与えられていたところ、2022年4月1日からは中小企業も含めた全企業の法的義務となっています。

 既に2023年となりましたが、パワハラ防止のための雇用管理上の措置義務が全企業の法的義務となってからまもなく1年が経つところ、措置義務違反には、厚生労働大臣による助言、指導又は勧告、さらには勧告に従わなかった場合の企業名公表というペナルティがあり、現時点でも何らの措置を行っていない中小企業においては、早急に対応を進める必要があることから、あらためてパワハラを含むハラスメント防止措置義務に関し、全体像を振り返り、自社において対応ができているか、確認いただきたいと思います。 

 

 

2 措置義務の対象、内容

 各法規により措置義務が規定されているのは

  ・パワハラ

  ・セクハラ

  ・マタハラ

となり、いずれも、現時点においては、中小企業も含めた全企業が対象となっています。

 措置義務の内容については、厚生労働省から、指針も公表されているところ、具体的な項目としては

① 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

② 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

③ 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

④ ハラスメントの原因や背景となる原因を解消するための措置

⑤ 上記①~④の措置と併せて講ずべき措置 

といった措置が求められています。

 

 より具体的に説明すると、

① については、方針を企業ごとに明文化し、社内で発表することなどが考えられます。

② は、まずは専用の相談窓口を設置する必要がありますが、形だけ設置するだけでは不十分  

で、適切に対応するため、相談窓口の担当者にハラスメント対応の研修を受けさせる等

し、内実も整備する必要があるといえます。ハラスメントの事案や、相談者の立場に応じ

て利用し易くするため、相談窓口を内部だけでなく外部にも設置することも考えられます。

③ 事後的な対応のため、ハラスメント調査の仕組みを作ることですが、専門的な対応、知識、経験も求められることから、外部の弁護士等に調査を委託することも考えられます。

④ 社内全体でもハラスメント研修を実施したり、業務体制を整備すること等が考えられます。

⑤ 相談者や行為者のプライバシーを保護するための措置を講じ、周知すること、相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として、不利益な取り扱いを行ってはならないことを定め、周知、啓発することが挙げられます。

 

 

 3 上記の対応ができていないが、措置義務を具体的にどのように実行していったらいいかわからない、外部の相談窓口、あるいは外部の調査窓口を設置したい、といった場合には、こうべ企業の窓口にぜひ一度ご相談下さい。

執筆者ご紹介


弁護士 松谷 卓也(まつたに・たくや)

①労務は主に使用者側だが、労働者側でも対応。法律上の問題だけではなく、労働者のプロファイル、法律上の帰結に拘泥しない柔軟な解決案を含め、具体的に戦略を提案している。

②保険会社顧問として自動車・労災・学校・食中毒・漏水事故、不正請求対応、約款解釈等幅広く対応。

③倒産は裁判所選任の破産管財人を歴任。

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